働き方を豊かに パソナ淡路島のいま

吉田:
本日は兵庫県淡路島にある株式会社パソナの施設「禅坊 靖寧」にお邪魔しております。パソナは、東京からこちらの淡路島に本社機能の一部を移転されて、3年目になります。この「禅坊 靖寧」というのはどういった施設なのでしょうか。

 

藤枝:
こちらは、360度自然に囲まれた中、禅などのアクティビティで精神を整えたり、からだ身に優しく健康的な料理で心身のバランスを整えたり、座禅リトリートを体験できる施設です。パソナグループでは、淡路島を「美食の島」「文化芸術の島」「健康の島」として、世界で最も先進的で豊かな生き方・働き方ができる場所にしよう、多くの雇用を創出しようと取り組んでおります。現在、淡路島でホテル・レストラン・レジャー施設など、様々な施設を運営しております。

 

吉田:
淡路島には現在、どのくらいの社員の方々がいらっしゃるのですか?

 

藤枝:
私の管掌するセールスサポート・オペレーション本部だけでちょうど200名がこの淡路島で働いています。

 

吉田:
藤枝さんご自身も淡路島に移住されているのですか?

 

藤枝:
私は、いわゆるハイブリッドワークで、東京、大阪、そして淡路と3拠点にメンバーがいますので、3拠点を行ったり来たりしながら、仕事をしています。

 

吉田:
藤枝さんのこれまでの経歴と、現在のお立場をお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

藤枝:
私は新卒でパソナに入社しまして、最初の10年間は、東京の営業チームでコーディネーター業務をしていました。その後、営業推進企画の方に異動しまして、営業全体のオペレーションや営業研修など、営業サポートに携わりました。2010年頃から業務部門に移り、派遣スタッフの方の契約書や、給与計算、保険手続き、クライアントの皆さんへの請求処理といった、バックオフィスの取りまとめを担当させていただいています。

パソナが2020年に淡路島へ本部機能の一部を移してからは、インサイドセールスのようなフロントから、営業アシスタント的なミドルの業務、そしてバックオフィスを淡路で担当しています。

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本部機能の淡路島移転プロジェクトまでの道のりと現在

吉田:
本部機能の一部移転というプロジェクトを、どのように進められたのか、お聞かせいただけますか。

 

藤枝:
2020年の9月1日に「パソナが本部機能の一部を淡路島へ」と新聞全紙で掲載され、注目していただくことも多いですね。実は淡路島での取り組みは2008年からと早く、"人材誘致"による地方創生を掲げ、農業人材の育成、観光事業の開拓などを進めてきました。また、以前より検討していたBCP(事業継続計画)対策の一環として「脱・東京一極集中」は念頭にありましたが、コロナのこともありリモートワークも可能となって一気に進んだという感じです。

 

吉田:
かなり大掛かりで大変なプロジェクトだったのではと思うのですが、いかがですか。

 

藤枝:
そうですね、あの発表があった9月に私の部門から5人が淡路に入り、準備を始めました。現地採用を行ない新しいメンバーを育てながら、少しずつ業務を拡大していきました。

 

吉田:
今はどのような採用活動をされているのですか?

 

藤枝:
採用に関しては、淡路島内での採用に加え、Uターンを希望される方、派遣スタッフからキャリアチェンジをしたいなどオープンポジションという形で手を上げて淡路に来ていただいている方もいらっしゃいます。そもそもコロナ禍もあって、地方に移住したいというメンバーもおり、本当にいろいろな採用ルートから入ってきていただいています。

オペレーション改善と環境にも優しい、ペーパーレス化を決意

吉田:
なるほど。では、そのような状況を踏まえつつ、本日の本題に移りたいと思います。人材業界では、紙の業務が欠かせないかと思います。藤枝さんが考える紙の扱いや、取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか。

 

藤枝:
2010年に、私が業務部門という、いわゆるバックヤードの部長を初めて担当した時に、まずびっくりしたのが「なんて紙が多いんだ!」ということなんですね(笑)

3年前の当時はすべて紙で行っていました。スタッフの方々のタイムカードや、契約書もすべて紙ですし、給与明細から何もかもが紙で、指サックをつけて紙をめくりながら、机の上にはいろんな紙が積み上がっていて。月初になると、請求書をFAXするので、FAX機に行列ができて......そういう状態を目の当たりにして、紙を減らしたいなと思いました。オペレーション改善の観点だけでなく、環境にも優しく、コストの面も考えてペーパーレスを進めていくことになりました。

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コスト削減だけではない、ペーパーレス化で得られた効果

吉田:
ペーパレス化を進めるために、具体的には、どのような取り組みをされたのでしょうか。

 

藤枝:
最初に取り組んだのは、タイムカードです。それまでは、複写式の紙を前半/後半で月に大量の紙タイムカードをまずスタッフの方々のお手元に届けるために郵送して、それをまたFAXで取り込んで......といった形をとっていて、非常に扱う枚数が多かったので、そこから取り組み始めました。

 

吉田:
処理するだけでも大変なのに、さらにそれが給与に直結するので、スケジュール通りに処理しなくてはいけないとなると、本当に大変ですね。DX推進の中でさまざまな取り組みに着手される中で、得られた効果などはありますか?

 

藤枝:
ペーパーレスやDXというと、まずコスト削減が目的にされると思います。実際、コスト削減は成功しました。少しずつペーパーレスを進めていき、コストで言うと45パーセントほど下がっています。その中で1番のコスト削減ポイントはやはり紙の部分です。それから通信費ですね。郵送費用だけなので、ペーパーレスによるコスト削減効果はさらに得られたと思います。

あと効果として挙げられるのはスピードですね。やはり紙であれば、出力して封入して発送して......とやっていると、お手元に届くまでに34日かかっていました。電子にすることによって、出来上がったらすぐに企業様や派遣スタッフの方にお届けできるので、ビジネススピードという意味では、非常に効果が大きかったと思います。

 

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吉田:
ビジネススピードというと、例えばスタッフの方々の契約書なども、かなり多くの契約が存在しているのではないでしょうか。契約業務については、御社の業態ですと、企業向けと個人向けがあるかと思います。そのあたりは、どのような取り組みをされたのでしょうか。

 

藤枝:
日本の労働基準法の中で、雇用契約、いわゆるスタッフの方と結ぶ契約に関しては「書面で締結」という法律があったので、なかなかそこを電子に変えることができなかったのです。その後改正されて、本人の同意を取れば電子でも大丈夫ですよという形になり、本格的に契約書の方も手を付けています。

我々としては、2010年頃から順番に請求書をはじめとした帳票類をWebにしてきた中で、契約書は最後の難関でした。派遣ビジネスでは契約書の枚数が多くなかなか手をつけられていなかったのですが、法改正もあり、まずはスタッフの方々との契約書から電子化を進めていっています。

ポータルサイトでスタッフ向けの情報を電子化

吉田:
スタッフの方々が関わる紙業務の電子化について、どのようなソリューションで課題解決に至ったのですか。そこに至るまでの過程や、こだわりポイントなどをお聞かせいただけますか。

 

藤枝:
契約書だけでなく、いろいろなものの電子化を進めていく中で、我々が取り組んだのが、マイページ、つまりスタッフさん向けのポータルサイトを作ったのです。

 

吉田:
スタッフさんがご自身で情報を閲覧できるのですね。

 

藤枝:
はい、すべてのパソナとのやり取りや、ご自身の情報をマイページ上で確認・入力できるポータルです。Webタイムカード、勤怠や有給申請、各種申請もマイページで入力できるようにするなど、いろいろな機能を加えていっています。契約書も加えたので、スタッフの方にしてみれば、今まで紙で郵送されてきた契約書がマイページ上で確認できるわけです。スマホでマイページにアクセスすれば、どこでも自分の契約内容も確認できるということで、スタッフの方には好意的に受け入れられました。同意もたくさんいただけて、現在は9割弱がWebになっています。

DXプロジェクトのカギは「連携」と「自動化」

吉田:
私どもは、御社のDXプロジェクトの中でも、今あるセールスフォースを基盤のクラウド環境から契約書といった帳票を作るという部分でお手伝いをさせていただいております。御社のような大企業ですと、「連携」や「自動化」という部分が大きなキーワードになると考えております。現在の取り組みは順番に行ってきているということでしたが、今はDXが何割ぐらい進んでいると捉えていますか?

 

藤枝:
ものによって進捗の差がありますね。例えば、サインをしたり同意をいただいたりする、いわゆる通知型の契約書・誓約書などは89割は進んでいると言えると思います。

一方、企業様と相互捺印をする、いわゆる判子を押して両者で保管するといった双方向型の契約書はまだまだこれからというところです。コロナ禍があって担当者の方も、出勤されませんというような状況で電子は少し進んではきてはいるものの、まだ2割程度です。

 

吉田:
コロナ禍を経て徐々に変わってきているのでしょうか。

 

藤枝:
おっしゃる通り、やはりコロナ禍は大きな変還点だったと思います。我々はコロナの前から電子化を進めていたので、コロナ禍も乗り切れたと考えています。コロナの緊急事態宣言下で、皆さん在宅勤務せざるを得ないという中、当社もほぼ全員が在宅に切り替えました。一方、私たちの契約書作成班のメンバーからは「私たちも毎日の出勤から在宅に切り替えませんか」という声が挙がったりもしました。そこで、ドキュサイン社の電子契約ツールを導入して電子の覚書を始めました。一旦、電子で結べるものについては、スタンドアローンでドキュサインを使いました。ただ、その時にメンバーから出た意見は「いや、紙の方が楽です」。要は、ドキュサインにセットして、宛先を入れて確認して送るという作業がかかるので、紙に戻していいですかと言われてしまいまして。

 

吉田:
DXあるあるですね。

 

藤枝:
そこで、やはりスタンドアローンで使っていると現場に負荷がかかるということで、オプロさんのご支援を受けて、セールスフォースと連携し、作ったものがそのまま送れるようになり、問題は解決されました。

 

吉田:
システムとしての必要性と、現場の運用との両立の課題がいろいろあるかと思いますが、着々と御社のDXが進んでいる様子がお伺いできて、非常に参考になりました。ドキュサインさんのお話、セールスフォースとの連携も含めて、大変貴重なお話をありがとうございました。

パソナ様導入事例はこちらよりご覧いただけます:https://www.opro.net/customer/pasona.html

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